仲田 Date: 2003.06.12 Thu 18:20:33 まだ読む前ですが,一応。 今日の新聞で取り上げられていたのでご存知の方も多いと思いますが, アフリカで,最古の新人の化石が見つかりました。 Homo sapiens がアフリカで誕生したとする単一起源説は有名で, 4つ前の書き込みでも紹介したように,分子データからも支持されています。 一方でネアンデルタール人など各地域の先駆者が,それぞれの地域でHomo sapiens へと 進化したとする多地域進化説というのもあり,論争が続いています。 アフリカ単一起源説のひとつの弱点として,Homo sapiens の誕生したであろう 10 から 30 万年前の化石がアフリカで未発見だったことがあるそうです。 今回見つかった化石がそのギャップを埋めたことにより,アフリカ単一起源説がさらに支持されることになったようです。 なお,著者らは新たな化石に Homo sapiens idaltu なる新亜種名を与えています。 何でもアファール語で老人といういみだとか。 Reference
仲田 Date:2003.06.16 Mon 19:45:22 読みました。 White et al. の論文で, Homo sapiens idaltu なる新亜種を記載していますが, 根拠は当該化石の特徴が,現生および化石の Homo sapiens のレンジから逸脱しているためでした。 しかし,同じ号の News & Views で Stringer は,必ずしも亜種にするのが 適当ではない,と考えているようです。 私も,新亜種を立てるのは適切とは思えません。 ある種の生物種の始祖は,ほぼ間違いなく形質が祖先的と予想されますが, それでも重要な形質を子孫と共有しているのなら,子孫と同一の分類群にしても良いはずですし, わざわざ分ける必要性を感じません。 Wildman et al. の方ですが,この論文では,類人猿の間でゲノムワイドな遺伝子比較を行い, より信頼性の高い分岐年代の推定を行った点がポイントかと思います。 一方,今までに,霊長類の分類階級を分岐年代によって定義しようとする試みがあり, それに今回の結果を合わせた結果,チンパンジーやボノボは(上記の定義に照らした場合), ヒトと同属の別亜属に相当することになったそうです。 ただし,これはもともと予想されてはいたことでした。 私の意見としては,分岐年代という推定が未だに困難な事柄をもって分類階級を定義するのは, 霊長類の分類体系に不要な混乱をもたらすだけのような気はします。 もっとも,チンパンジーとボノボをヒトと同属にするのは, 「ヒトは必ずしも,特別な存在ではないのではないか」という問題提起としての効果を 一般に対してもたらす可能性があり,興味深い提案だと思います。 仲田 Date:2003.06.17 Tue 12:35:14 Science にもニュース記事が出ていました。 それを読みつつ気がついたんですが,この新亜種小名(idaltu)の語源は,長老と訳すようです。
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