近年,真核生物の大系統を明らかにしようとする研究が盛んに行われています。
今回,ゲノムプロジェクトが進んでいる原始紅藻を加えた,
多遺伝子解析の研究が東大のグループによって発表されました。
詳しい系統解析法の解説は省きますが,主な真核生物の中では,
細胞性粘菌が最も原始的だとされています。
真正粘菌(変形菌)を始めとする他のアメーバ類が
次いで原始的な位置を占めます。
上記のAmoebozoaを除いた真核生物は大きく2グループに分けられます。
動物と菌類からなるOpisthokonta
(後方鞭毛虫類;精子などの遊走子が後方に鞭毛を持っている仲間)と,
藻類を含めた植物と残リの原生生物を合わせた広義の Plantaeです。
Plantaeの中では紅藻類が最も最初に分岐し,
Plantaeの共通祖先が既に葉緑体を持っていたことが示唆されます。
ところが,これに続いて分岐するいくつものグループは
(緑色植物と灰色植物を除き)一次共生に由来する葉緑体を持っておらず,
一度葉緑体が失われた可能性があります。
従来は一次共生した藻類は単系統群を形成し,
葉緑体が失われたことはないと考えられて来ました。
なお,葉緑体を失ったグループの内,ユーグレナ(=ミドリムシ),
褐藻類,渦鞭毛藻類など複数のグループは,
葉緑体を持った真核生物を丸ごと取り込んで,
自分の葉緑体にしたことが知られています(二次共生)。
一度過去に葉緑体を持っていたことが,
これらの生物が葉緑体を再獲得することに役立ったかもしれないとのことです。
Reference