真核生物と原核生物の間でゲノムの一部が移行する、という現象の証拠と思われる配列が宿主で見つかりました。
Callosobruchus chinensisという甲虫に寄生しているバクテリアでWolbachiaという寄生(共生に近い)種のゲノム断片がC. chinensisのX染色体上で発見され、原核生物と真核生物間でのゲノムの移行が起こるということの証拠になりそうです。
non-LTR retrotransposon様の配列も見つかっており、共生・進化に新しい視点を与えてくれるかもしれません。今後が楽しみになってきました。
こういう証拠って今までなかったんですか? ちなみにWolbachiaの話は日系サイエンスで読んだ記憶があります。内容は忘れましたけど。
Prokaryote間では確認されていましたが、prokaryoteからeukaryoteは初めてのようです。
Wolbachiaのケース以外にも見つかってくるといいですね。原核生物やウイルスを介した真核生物間のHGTがいつか見つかるのが楽しみです。
Wolbachiaが載っていた日経サイエンスは、2002年7月号でした。図書館なんかで探してみてください。「細菌が操る性転換」という題で、著者は L. D. ハースト / J. P. ランダーソン です。
ついでに今気づいたんですが、以前の書き込みで「日系サイエンス」って間違えて変換していた・・・
仲田さんの話に関連して、生殖と Wolbachia の関連論文を紹介しておきます。
Azuki bean borer (Ostrinia scapulais) と Mediterranean flour moth (Ephestia kuehniella)は別の種類のWolbachiaに感染しています。紹介する論文ではO. scapulaisに感染しているWolbachiaをテトラサイクリン処理してオリジナルのWolbachiaを排除したE. kuehniellaに感染させて生殖機構への影響を比較しました。
O. scapulalisではfunctional feminizationを起こすWolbachiaはE. kuehniellaでは male killing を誘発します。分子機構はわかっていないのですが、原著論文を読むといろいろと想像力を刺激されて面白いです。