水平遺伝子移動

Last updated on Tuesday 23rd September 2003


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仲田 2003.08.24 Sun 20:57:59
細菌に関して、W. F. Doolittle を中心とする研究者達は、 あまりにも激しい水平遺伝子移動が起きているため、 遺伝子系統樹からは進化の実態を明らかにすることは出来ない、 と主張していました。 ところが、ここ1年程度の間に研究が進歩し、従来の見方の問題点が明らかになると共に、 細菌における水平遺伝子移動は確かに多く存在するものの、 系統解析が不可能になるほど激しくはないということが分かってきました。 これらの展望が最新号の PNAS にまとめられています。 真核生物における水平遺伝子移動は今(これから?)ホットな話題なので、 その基礎知識として把握しておくことも悪くないと思います。 (ちょっと難解で、一部わかんないとこもありましたけど) Kurland, C. G., Canback, B. & Berg, O. G. Horizontal gene transfer: a critical view. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 9658-9662 (2003). Campanul.biol.s.u-tokyo.ac.jp ・ Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1) Name: 仲田  Date:2003.08.26 Tue 11:04:45 del とある学会の関連 ML で紹介されていた記事なんですが、 好熱性細菌から取れたウイルス様粒子(以下 ST-VLP)が 広範囲な水平遺伝子移動に関与している可能性があるようです。 簡単にいうと、この ST-VLP なるものは、普通のファージとは異なり、 宿主のレンジが異常に広く、原始的な好熱菌から取れたにもかかわらず、 大腸菌や枯草菌にも感染し、遺伝子導入を行っている可能性があるそうです。 ST-VLP は内部に約400kb もの DNA を含んでいることから、 細菌の DNA をかなりの長さにわたって運べることも予想されます。 論文中では、好熱性細菌から得られた ST-VLP を 一部のアミノ酸合成酵素を欠いた大腸菌もしくは枯草菌に与えたところ、 そこそこの割合で形質転換が起こったことが示されています。 しかし、好熱菌の DNA 単独で与えた場合の形質転換効率が調べられていないため、 実際の遺伝子導入に ST-VLP がどの程度関与していたかは疑問が残るところです。 いずれにせよ、ST-VLP の宿主レンジが異常に広いことは確かなので、 細菌のグループ間での水平遺伝子移動にこれらの仲間が関与している可能性は かなりあるのではないかと思います。 この論文は、ネット上でフリーで閲覧できるようです。 日本微生物生態学会 Chiura, H. X. Broad host range xenotrophic gene transfer by virus-like particles from a hot spring. Microb. Environ. 17, 53-58 (2003).

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