哺乳類の進化系統に関して 仲田[2002/11/11 11:6:57] さて、以前のゼミで有胎盤哺乳類の系統樹を紹介しましたが、話はまだ決着していませんでした。 Murphy et al. 2001 の結果から、ツパイ目は皮翼目とともに霊長目に近い仲間と考えられていました。ツパイの外見も原始的なサルといった雰囲気を持っているので、これについてはもっともらしい結果だったわけです。 ところが、レトロポゾンの進化を調べた東工大のグループがツパイ(ツパイ目)の位置について別の仮説を支持する結果をだしました(Nishihara, Terai & Okada, 2002)。具体的には、Alu-Related SINEs という種類のレトロポゾン配列をツパイのゲノムから見つけた(Tu typesI and II)という話です。 Tu types I や II に似た配列は、マウスやラット(齧歯目)が持っていて、霊長目からは見つかっていません(霊長目の Alu type I は塩基欠失のパターンが違う)。特に、ヒトゲノムの中からも見つからなかったことから、霊長目はTu types I や II に似た配列を初めから持っていなかった可能性が高いと考えられます。 このことから、ツパイ目は齧歯目により近縁で、霊長目とは離れていると予想しています。この論文では皮翼目(おそらく霊長目に近縁)、ウサギ目(齧歯目に近縁)が調べられていないため、この2目との関係はわかりません。 今後の成り行きをもう少し見守っていきたいと思います。 Reference : Murphy et al. Resolution of the early placental mammal radiation using Bayesian phylogenetics. Science 294, 2348-2351 (2001) Nishihara, H., Terai, Y. & Okada, N. Characterization of novel Alu- and tRNA-related SINEs from the tree shrew and evolutionary implications of their origins. Mol. Biol. Evol. 19, 1964-1972 (2002) |