トリパノゾーマ類という原生生物がいます。
眠り病やリーシュマニア症などの熱帯病の原因となる寄生虫(原虫)です。
このほど、この原虫が過去に葉緑体を持っていたらしいことが分かりました。
具体的には、藻類において葉緑体から核に移ったとされる遺伝子を
トリパノゾーマから単離されたということです。
トリパノゾーマ類は、真核生物の中でもユーグレナ類に近く、
Euglenozoaという門に分類されるため、
ユーグレナ(緑藻の二次共生に由来する葉緑体を持つ)との共通祖先が
すでに葉緑体を持っていて、
トリパノゾーマの仲間で失われたと考えることが出来ます。
この発見の意義としては、従来想定されていなかった農薬が薬剤の候補になる、
ということがあげられます。
植物に特異的な葉緑体由来の遺伝子を標的にする農薬は、
少ない副作用でより安い薬になりえるためです。
トリパノゾーマ類の分布する熱帯域は、発展途上国が多いため、薬が安いことも重要なのです。
Reference
ん?トリパノソーマがplastidを持っているというのは
K岩先生お得意の話ではなかったっけ?どこがどう新規なのですか?
マラリアは葉緑体と相同なオルガネラをもっていることで有名ですが、
トリパノゾーマは全く別の生き物です。葉緑体と相同なオルガネラも失われています。
付け加えると、マラリアの葉緑体とトリパノゾーマの(祖先の)葉緑体は
別系統だと思われます。