1週間遅れで申し訳ありませんが、 先週のNature に昆虫の翅に関する論文が載りました。 昆虫の多くは翅を持っていますが、翅を2次的に失った昆虫もいます。 その中で、ナナフシの仲間(Phasmids ) では翅を再進化させたものがいるというのがこの論文のテーマです。 収斂進化ではなく、再進化、つまり一度失われたものを取り戻したというのが ポイントです。
具体的にはナナフシ類の分子系統樹を描いて、 翅を持ったものの位置づけを見ています。 これを見る限り、ナナフシの祖先は翅を失っていたことと、 一部の系統で翅を再進化させたことは確かなようです。 さらに、翅の脈(翅脈)の比較から、 再進化した翅が典型的な昆虫の翅と騒動であるとしています。
素直に解釈すると、ナナフシの祖先で翅を作る遺伝子のマスタースイッチ (転写因子?)が一度オフになり(壊れ)、後に改めてオンになった (転写因子を獲得した)といったところでしょうか。 なお、翅のパーツを作る遺伝子群は翅のないナナフシでも保存されていたと考えます。 著者らは翅の再進化が1度ではなく、4〜5回起こったと考えているようですが、 これには疑問が残ります。
再進化というのは中々信じがたい現象ですし、 系統樹だけで主張するのは危険でしょう。今後、翅をつくるマスタースイッチ (転写因子)が発見されれば、仮説の証明も出来ると思います。
Reference
もしかしてまだ見つかってないナナフシの 抑制されているtransposonがなんらかの影響でまた飛んだのかも。
つまり、ナナフシのある過去においてtransposonが 転写因子なりなんなりのexon中に飛込んだのだが、 またそのtransposonが出ていったのかもしれないですね。 系統樹でまだ羽を失ったままのものとの対比によってさらに 詳細な研究ができると思います。今後が楽しみです。
Transposonの可能性はありますね。 原論文の考察になかったので考えてませんでした。 確かにtransposonなら狭い系統で何度も翅の再進化が起こったことも説明できます。
ちなみに、昆虫の「はね」は鳥の「羽」とは全く異なるものなので、 「翅」として区別して表記することが多かったと思います。 双翅目(ハエ目)とかって分類群もあります。