多細胞生物において、 体細胞のDNA複製時に生じた変異は次世代へ遺伝せず、 癌を引き起こす一つの原因と考えられている。 一方、生殖細胞の減数分裂時に生じる変異は次世代へ遺伝し、 進化を引き起こす要因となりうる。 真核単細胞生物である分裂酵母は、 栄養に富んだ培地では体細胞分裂を繰り返して増殖する。 養分に乏しい培地では二つの細胞が接合して減数分裂を行い胞子を形成する。 その際、接合型h90の株はクローン内で互いに接合し、 h+やh-の株は異なる接合型同士でのみ接合する。 こうした性質から、 分裂酵母は体細胞分裂を繰り返した後に減数分裂を行う 多細胞生物の生殖系列のモデルとなる。  私は分裂酵母を用いて体細胞分裂と減数分裂とにおける変異率を測定し、 両者における変異率の差異を検討した。 結果、差を明確に示すには至らなかった。 今後は減数分裂における変異率の増大を再度詳細に確認すると共に、 DNA複製変異体などを用いて減数分裂の際に変異率が増大する原因を 明らかにしていきたい。 その他にストレス応答遺伝子変異体を用いて 減数分裂時の変異率の変化を調べ、 変異率の増大を減数分裂特異的に誘導する因子を調べていきたい。 しかし、うまい実験系が思いつかず進み具合はよろしくない。 ストレス等外界の影響により減数分裂の変異率が特異的に増大するならば それは進化のdriving forceとなってきた と私は考えるので必ず続けていくつもりですが。